「ミライのつくり方2020―2045 僕がVRに賭けるわけ」(GOROman 著/西田宗千佳 構成)を読んだ

VR関連の情報源として1年ぐらい前からTwitterでウォッチしていた@GOROmanさんが著書を出されたということで、手が空いてから注文しました。以前から出版への関心と出版ビジネスへの疑問(?)のようなツイートをされていたのを目にしていたので、どういう本に仕上がったのだろうという関心もありつつ。

f:id:kobaVGC:20180518223003j:plain しばらく読んでいたら開きグセがついてしまったところ。

聞き書き」という作り方

本書は、GOROmanさんの語りをジャーナリストの西田宗千佳さんがテキスト化する形を基本として作られたそうです(Twitterでそのようなやりとりがあったと記憶)。ひと昔前にはテキスト化を担当する人は「ゴーストライター」と呼ばれ、存在を隠されることも多かったものですが、近年では「ブックライター」という職業名で認知されつつあります。聞き書きによる書籍化、テキスト化は今後も増えていくでしょう。というか、特に語られないだけで、今でもけっこう多くの本が同様の手法で作られていると思います。

人の思考は文章化する作業によって整理される面があり、編集者が読みやすく整える中で、文章はさらに洗練されます。しかし何事においても変化の激しい昨今では、最先端を切り開いていく実務家がゆっくりと本を書く時間はありません。でも彼らの経験や考えは大きな資産であるので、十分な専門知識と文章化のノウハウを持つ筆者による聞き書きというのは、時代に合った合理的な方法だと認識しています。問題は書籍という商品を設計する中でのギャランティの設定ですが。

「キモズム」とは何なのか?

本書は全5章構成で、1、2章がGOROmanさんの来歴とVRについて。3章はGOROmanさんの提唱する「キャズム」ならぬ「キモズム」。4、5章ではVRの展望をQ&A形式で語る、といった内容になっています。

GOROmanさんの少年期から始まる第1章は、同年代の私にとってはとても興味深いものでした。生まれた年はおそらく私が3年ぐらい先ですが、パソコン通信を始めた年齢はGOROmanさんの方が5、6歳若く、あの頃の感じだなあと…。こういうのを「わかりみが深い」と言うんでしょうか。第2章は新清士さん著「VRビジネスの衝撃」とあわせて読むとおもしろいと思います。本書の前のOculusのエピソードが出てくるので。

第3章の「キモズム」はTwitterで見ていて意味がイマイチわからない言葉だったのが、よく理解できました。「キモさ」を越えた受容までの谷間がキモズム。カッコよく見せても何の役に立つのかわからないものはキモい、といった指摘はおもしろかったです。

第4、5章は、自分がVRに感じていたモヤモヤを整理できました。個人的な体験として、どうもVR体験でゴーグルをかけても立体感や没入感を感じられず、いまいちその革新性を実感できずにいるんですが、重要なのは現実の情報の追加または減損、そして代替であるという考察には非常に納得しました。そして「ペーパーパラダイムから空間パラダイム」という考え方はとても興味深い。

一方で、技術の進化により人がよりクリエイティブになる可能性というものには、私はかなり悲観的です。特別なスキルも表現の意欲もない人間が情報と発信手段を得て想像力を働かせた結果が大量にTwitterにあふれていますが、そこで目に入るものの多くはしょーもないネガティブな情報です。私自身、ぼんやりTwitterなど眺めていると、そのあたりの後ろ向きな話が浮かびがちになります。

このあたりが凡人の平均的な「何かクリエイトする」のラインなのかなというのが私の感覚なんですが、この想像が裏切られることは大いに歓迎であり、今の社会にもっと助け合いを必要とする仕組みや相互信頼により得できる仕組みを組み込むことで、凡人の創造性をもっと前向きなものにすることも可能なんじゃないかと思っています。具体的にどんなものかはわかりませんが。

VRをはじめITやAIの今後を考察する参考に、なかなかに得難い視点が得られる本だと感じました。

出版業がこの先生きのこるには?

ところで、出版業界について本書や「マッハ新書」として売られている電子書籍「すべての出版社は多分潰れる」に書かれていることについては、私も全体的に同意するところです。

今の出版社は著者が大きく儲かるビジネスを提案することがなかなか難しい。ソフトウェアやITサービス産業に比べればエコシステムがやたらと大きいこともあって著者の取り分は少なく、だからといって数を売れるわけでもありませんない。しかし手間は昔と変わらないどころか、凝った企画が求められるぶん面倒になることすらあります。

もっとも難しいのは、活版印刷技術により生まれた概念である「版」=高い完成度を持つ固定されたテキストを必要とせず、常に断片的な知識を吸収しながらアップデートを繰り返す人や、「版」を作り込んでいては間に合わないほと変化が早いテーマが増えたことかもしれません。一方で知識を収集し、編纂し、未来のために残す仕事の意義は変わらないだろうと思っています。

情報の編集や発信のスピード感、また適切なメディアの選択などについては引き続き試行錯誤が続き、大きすぎるシステムは維持できなくなっていったりもするでしょう。自分の視点ではいくらか光明らしきものも見えていますが、業界全体はどうなるのか…。

この本(「ミライのつくり方」)の電子書籍が出ないというのが、よくわからないですね。想定されるターゲットからすれば、わずかな費用で出せてきっとよく売れるだろうに。

ミライのつくり方2020―2045 僕がVRに賭けるわけ (星海社新書)

ミライのつくり方2020―2045 僕がVRに賭けるわけ (星海社新書)

「YOCCO iPad 9.7 第6世代 2018カバー apple pencil 収納ホルダー付き」レビュー

ここ2、3年でモバイル環境は大きく変わったと思います。タブレットでだいたいの仕事ができるようになり、東京オリンピック準備の影響もあって、街にフリーWi-Fiが増えました。

駅やスターバックスタリーズなどの喫茶店のほか、ファミリーマートセブンイレブンにイートインスペースが増え、ちょっと座れてWi-Fiもある環境があちこちにできています。テザリンは高いわ公衆無線LANも壊滅的だわという5、6年前ぐらいを考えると、至れり尽くせりという感じです。

とはいえ、スマホの進化がそれを上回っているもんで、スマホひとつあれば大抵のことは足りていたんですが。それでも思い立ってiPad(第6世代)とApple Pencilを買い、ついでにキーボード付きのカバーを買ってみました。こちらの製品です。

この手の製品のレビューは非常に少ないようなので、書いておこうと思います。1週間ほど使っての感想です。

ノーストレスで当たり前に使える

使用感は「ノーストレスで使えて違和感がない」。以上であまり細々と言うことがありません。8年前ぐらいのスマホタブレットBluetoothキーボードだと「高い」「たまに不安定」「ペアリング方法忘れる」「微妙に反応が鈍いので速すぎるタイプは危険」のような不満点がありましたが、この製品にはそういうのはありませんでした。

簡単にペアリングでき、私程度のタイピング速度では反応速度に不満を感じることはまったくなく、動作も安定しています。9.7インチサイズでキーボーの広さも十分あり、タイピングで戸惑うことも(ほとんど)ありません。変換の挙動などに多少の違和感はあるけれど、これはもうOSやアプリの問題なので、環境のチューニングか慣れでなんとかなるでしょう。

あえて超細かいことを言うと、質感はあくまでもお値段(3,000円ぐらい)なりのもの。キートップの角があまり丸められておらずカクカクしているのと、少々カチャカチャ言うのがいかにも「安いキーボード」という印象で、気にしだしたら気になるかもしれません。

f:id:kobaVGC:20180518221302j:plain キーボードはこんな感じ。

結局小型ノートパソコン並みの重量になってしまうのが難点

ただ、わりと致命的に何とかならないかなと思うので、物理的に「重い」点です。わりと厚手の素材を使い、マグネットもしっかりと入れているためかカバー+キーボードで400g程度もあるようで、iPadと合わせて900g程度。それならMacBook Air 11インチでよくない? Windows機ならもっと軽くてそこそこまともに動くのもいっぱいあるぞ、という重さになってしまいます。

そう考えると、これはベストソリューションではないのかもしれません。iPad+キーボードを持ち歩くなら、もっと軽量のカバーないしバッグ+スタンド的なものと、分離したキーボードの方がいいのかも。

f:id:kobaVGC:20180518221256j:plain カバー裏面。

f:id:kobaVGC:20180518221318j:plain Apple Pencilホルダーが付いていて、磁石で適当なところに張り付けられます。

f:id:kobaVGC:20180518221319j:plain 裏面を開いてiPadを立てられるようにしたところ。

もう少し使い込んで、本当にiPad+キーボードの環境に求めるものを突き詰めてみます。

「レディ・プレイヤー1」を観た

Twitterで評判がよろしかった「レディ・プレイヤー1」を鑑賞。40~50代おっさん大歓喜作品でした。


映画『レディ・プレイヤー1』日本限定クリップ映像(ガンダム編)【HD】2018年4月20日(金)公開

当時ラジオでよく聴いた洋楽やら映画やらゲームやら「80年代ポップカルチャー」山盛りのマトリックスやらサマーウォーズメタバース戦記モノなんだけど、ジャストミートの年代ながら元ネタがけっこうわからず、文化資本の貧弱さを感じる。

まあでも、元ネタがどうとか考えずに見ても楽しいですね。

予備知識ゼロで観に行った結果、一部キャラクターの区別がつかずに理解が進まなかったことがあった。ハリデーと途中で対立したのがモロー、悪いヤツはソレント。よし覚えた。

  • ジェームズ・ドノヴァン・ハリデー:「オアシス」の開発者でありイースタエーッグを仕込んだ人。ウォズ的ギークでありナード
  • オグデン・モロー:「オアシス」の会社の広報宣伝担当であり、スティーブ・ジョブズ的ポジションの人物ながら長生きしている
  • キーラ:モローの妻であり、若き日のハリデーも恋をした女性
  • ノーラン・ソレント:IOIのゲーム部門リーダーであり悪のボス的ポジション

原作「ゲームウォーズ」は文庫で上下巻あるんですね。映画とはかなりストーリーも違うらしいけど、さすがに上下巻分を140分に詰め込むのは苦しかろう。原作も楽しめそう。